個人年金はとても人気の商品で、加入している人は非常に多いです。
ですが
「本当にデメリットないのだろうか?」
「今の時代に加入してもメリットあるの?」
と感じている人も多いと思います。
もちろんみんなが入っているから、というだけで加入するのは避けるべきで、しっかりメリットとデメリットは理解すべきです。
個人年金は、少し前に比べて利率が下がってしまいましたが、まだ老後の資産を構築するには有効な手段である可能性があります。
しかし、個人年金特有のデメリットも存在するため、きちんと理解をしてから加入するようにしましょう。
この記事では個人年金のメリットとデメリットだけでなく、老後の資産を形成する手段についても解説していきます。
なぜみんな個人年金に加入するの?貯金にはないメリットを解説
ではなぜ多くの人が個人年金に加入するのでしょうか?
その理由は、
①貯蓄よりも利率が高い
②税金の負担が減る
③毎月天引きされて簡単に引き出すことができない。
という点にあるからと考えられます。
それぞれについて解説していきたい思います。
個人年金は貯金よりも利率が高い
個人年金は、貯金よりも利率が高く効率的に貯められます。
保険会社の営業マンも
「今銀行に預けていても、全く増えないですよね? だから個人年金に加入して効率的に貯めていきましょう!」
といって営業してきます。
では実際の利率がどれくらいか、明治安田生命の年金かけはしを用いて、計算してみましょう。
ここで明治安田生命の「年金かけはし」という個人年金を使って試算していきます。
・商品名:年金かけはし(明治安田生命)
・契約年齢:25歳
・性別:男性
・据え置き期間:有
・月掛け保険料(口座振替料率):20,000円
という内容で試算をしてみると
年金開始開始年齢:65歳
払込保険料累計額:840万円
保険料払込期間:35年
据え置き期間:5年
基本年金年額:約89.9万円
一括受取額:約886万円
年金受取累計額:約899万円
年金受取率:107.0%
という結果になりました。
説明すると、25歳の男性が毎月20,000円の保険料を60歳までの30年間支払った場合、合計で840万円の払い込む計算です。
そして65歳からの75歳までの10年間毎年約89.9万円の年金を受け取ることができ、合計すると約899万円受け取ることができる計算です。
この時、支払った保険料の総額が840万円のため、受取率は
899万円÷840万円=107.0%となります。
注意すべきは、7%増やすのに据え置き期間を含めると40年かかっているので、実質の年率は
7%÷40=0.175%となります。
ちなみにメガバンクで同じ額を定期預金で積立をした場合、貯まる額は8,415,137円です。(金利0.01%で計算)
これをさらに5年間に渡って0.01%で増えて行ったとしても最終的に、8,419,345円となるので、20,000円も増えません。
よって、銀行に預けておくよりも個人年金の方が、効率的に貯められるというのは事実です。
個人年金は税金の負担が減る
銀行にお金を毎月一定額をあずけても税金の負担が減ることはありませんが、個人年金に加入して毎月保険料を支払っていると、税金の負担が減ります。
これは「生命保険料控除」いうものを使うことによって、所得税や住民税などの負担が減るのです。
そもそも所得税や住民税をいくら支払うかは、その人の年収によってかわってきます。
そして税金を計算するときは、年収の全てが対象になるのではなく、年収から控除という計算の対象外となるものを引いて、残った課税所得というものに”だけ”、特定の税率をかけて計算されるのです。
つまり、控除の額が多ければ多いほど、税金を支払う額が少なくて済みます。
いくら負担が減るのかを所得税と住民税に分けて、解説していきましょう。
所得税
所得税の控除額は、年間の保険料の支払いが8万円を超えていると、総収入から最大で4万円控除されます。
所得税は課税所得の額によって、計算されるときに使われる税率が違ってくるのですが、仮に税率が20%
だとすると、
4万円×20%=8,000円
となり、だいたい年間で8,000円の税金が戻ってきます。
「たかだか8,000円かよ〜」
と思うなかれ!
これが35年続くとなると、
8,000円×35=280,000円になり、バカにできない額になります!
住民税
同じように住民税を計算するときは、年間の保険料の支払いが5.6万円を超えていると、総収入から最大で2.8万円控除されます。
住民税の税率は、統一して10%なので、
2.8万円×10%=2,800円
の節税となります。
ただし!住民税の場合は、3分野ある生命保険料控除(一般、介護医療、個人年金)の合計が7万円までです。
ですので、死亡保険、医療保険、個人年金保険にバランスよく加入していた場合、
2.8万円×3=8.4万円
の控除が受けられる訳でなく、7万円までですので注意が必要です。
所得税の場合は3分野合計で12万円まで控除が受けられますので、3分野とも満額の控除を受けたとしても、減額される心配はありません。
簡単に引き出すことができない
個人年金で貯めた額を引き出したり使ったりする場合は、解約するか契約者貸付を使うしかありません。
ある意味これはデメリットとも言えるのですが、途中で解約すると元本割れしてしまう可能性がありますし、契約者貸付を利用すると、返済するときに利子を上乗せする必要があります。
よって簡単に引き出すことができず、保険料も毎月決まった日に、自動的に口座から引き落とされるので、とても貯めやすいのです。
本当に個人年金だけで大丈夫なの?デメリットを解説
メリットも多い個人年金ですが、もちろんデメリットも存在します。
このデメリットをしっかり認識して加入するようにしましょう。
途中で解約すると損をする可能性があります!
個人年金は途中で解約すると損をする可能性があるため、注意が必要です。
特に加入してから、早いタイミング解約すると、解約したときに受け取ることができる解約返戻金の合計額が、支払った保険料の合計額の半分も返ってこないということもあり得ます。
「自分は絶対解約しないから大丈夫!」
と思っている方
上記の試算では、毎月2万円の保険料で試算をしましたが、その保険料を35年間ずっと支払っていける自信はありますか?
早期解約の可能性というのは今の時代とても高いですので、注意が必要です。
例えば、今は終身雇用は崩壊しており、1社で最後まで勤め上げる人は減って転職という選択をする人が増えています。
転職によって年収が減ってしまったりすると、毎月の支出を見直す必要があるのです。
さらに自分に共働きの妻がいた場合、妊娠等によって退職した場合も収入が減ってしまいますし、子供が増えると教育費もかかってきます。
このように解約を検討しなければいけない場面は、以外にも多くあるため、加入する際は慎重に考えましょう。
そもそもなぜ元本割れが発生するの?
そもそもなぜ元本割れをするのか不思議に思ったことはないですか?
それは、自分が支払った保険料が全て積み立てられているわけではなく、いくらかは手数料として徴収されて、会社の運営費に回されています。
これは別に悪いことではなく、保険会社もあくまで商売でやってますので、どうしても人件費や物件費などがかかるのです。
このため、元本割れを起こしてしまうのは、保険商品という仕組み上仕方ありません。
生命保険会社が破綻する可能性には注意!
意外とみなさんあまり考えていないのが、生命保険会社が破綻した時のリスクです。
個人年金に加入していても、販売する生命保険会社の経営が破綻してしまった場合、せっかく貯めていたものが無駄になってしまう可能性があります。
もちろんこれまで支払った保険料が全て無駄になる可能性はなく、「責任準備金の90%」は最低でも守られることになっているのです。
責任準備金とは自分がこれまで支払った保険料のうち、保険金や給付金の支払いのために、積み立てられていたお金のことをいいます。
しかし、あくまで責任準備金の”90%”しか保障されないので、損をする可能性は非常に高いです。
「保険会社なんて潰れないでしょう!」
とたかを括っているあなた
この20年の間にこれだけの保険会社の経営が破綻しています。
・日産生命:1997年に破綻 プルデンシャル生命に契約引き継ぎ
・東邦生命:1999年に破綻 ジブラルタ生命に契約引き継ぎ
・千代田生命:2000年に破綻 ジブラルタ生命に契約引き継ぎ
・第百生命:2000年に破綻 マニュライフ生命に契約引き継ぎ
・協栄生命:2000年に破綻 ジブラルタ生命に契約引き継ぎ
・大正生命:2000年に破綻 PGF生命に契約引き継ぎ
・東京生命:2001年に破綻 T &Dフィナンシャル生命に契約引き継ぎ
・大和生命:2008年に破綻 PGF生命に契約引き継ぎ
いずれの保険会社もどこかしらの保険会社に契約を引き継がれています。
経営破綻した会社の保険に加入していた人は、本来受け取れるはずの保険金や給付金などを受け取ることが出来なかったりなどと、何かしらの損をしているのです。
内容が複雑すぎる個人年金には注意しましょう
個人年金は、保険商品なので、耳慣れないそして馴染みのない単語に接したり、理解が難しい仕組みを理解しないといけなくなります。
これらをきちんと理解して加入する分には何も問題はないのですが、みんなが加入しているからと内容もよくわからず加入するのはあまりよくありません。
内容を理解せずに加入することは、自分がよくわかっていないものにお金を支払っているいると思いましょう!
そして個人年金には円建てと外貨建てと2種類ありますが、外貨建ては更に内容が複雑で、背負わないといけないリスクや、円建てではかからないコストもあるので、注意すべきです。
個人年金以外で効率よくお金を貯める方法
では個人年金以外で効率よく老後の資金を貯める方法はないのでしょうか?
じつはたくさんの制度を使って、老後の資金を準備することは可能です。
そして今一度国の公的年金についても再度理解する必要があります。
確認していきましょう!
公的年金の仕組みをもう一度理解しよう!
個人年金の加入を検討する前に、国の公的年金の仕組みはきちんと理解していますか?
公的年金には、国民年金や厚生年金という種類があるのです。
国民年金は日本国民全員が加入すべきものですが、主に自営業やフリーランスの方が加入しています。
掛け金は毎月16,340円(平成30年4月時点)で、配偶者がいる場合は、配偶者の保険料も支払わなければいけません。
そして、65歳以降になると、老後の年金として「老齢基礎年金」を受給することが出来、満額は779,300円で、毎月にすると約6万5千円程度です。
一方で厚生年金は、会社員や公務員などが加入できる年金で、自営業やフリーランスは加入することができません。
保険料はその人のお給与がいくらかによって変わってき、自分の配偶者の年収が130万円未満の場合は配偶者の保険料は免除されます。
厚生年金に加入しているひとは、国民年金にも加入している形となり、老後に受け取ることができる年金も、「老齢基礎年金」に加えて、「老齢厚生年金」を受け取ることが可能です。
国民年金や厚生年金に加入していることによって、受け取ることができる年金の平均額は、国民年金が約5万5千円、厚生年金が約14万7千円です。(厚生年金保険・国民年金事業の概況より)
自分の受給額を知ろう
自分がいくらの年金を受給できるかは、年に1度自宅宛に送られてくる、「ねんきん定期便」に記載されているので確認してみましょう。
基本的に自分の年金額は、自分の平均の収入や、どれだけ公的年金に加入し保険料を払っていたかによって変わってきます。
繰り延べ制度をつかう
公的年金は繰り延べ制度を使うことによって、受給するタイミングをずらすことができます。
通常、老齢年金の受給年齢は、65歳からですが、これを70歳に遅らせる(繰り下げ)たり、反対に60歳に早める(繰り上げ)ことも可能です。
そして、70歳に繰り下げすることによって、年金の受給額をUPすることもできますが、60歳に繰り上げた場合は年金の受給額が減ります。
この制度を使って、退職後も70歳までは、これまで自分で貯めた貯蓄と退職金のみで生活し、70歳から増えた年金を受給するという方法を取ることも可能です。
ですが、今後年金の受給開始の年齢はどんどん上がっていくと予想されており、事実すでに年金の受給開始が70歳まで上げようと国は動いているため注意しましょう。
自分の会社の退職金を活用する
日本の企業は退職後も面倒をみてくれる優しい企業が多く存在します。
自分の所属している会社の退職金制度がどのようになっているか確認してみましょう。
会社によっては退職金を一括ではなく、分割で支給してくれる「企業年金」を導入している企業があります。
企業年金は「確定”給付”年金」と「確定”拠出”年金」に分かれているのです。
確定給付年金は、将来受け取れる年金の額が決まっていますが、確定供出年金は、会社の代わりに自分で退職金の原資を運用して増やす必要があります。
自分で保険料を払うわけではないので、とても有効な制度なのですが、企業によっては企業年金制度がないところもあるので注意が必要です。
なにより、終身雇用制度が崩壊している現在の日本では、転職する人も増えてきており、転職した先の企業に企業年金がないということも考えられるため、企業年金だけを頼らないようにしましょう。
その他の貯蓄制度を活用する
上記の制度以外にもiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(つみたてNISAも)などの非課税枠を使って、自分で投資をしてみるのも良いです。
普通は、株式や投資信託で運用をすると、利益が出た場合に、約20%の税金が徴収されますが、iDeCoやNISAは非課税となります。
もちろんそれぞれに拠出できるお金や、運用できる資金や年数などに上限がありますので、しっかり確認するようにしましょう。
特にiDeCoは拠出した掛け金が、全額所得控除となるため、税金の負担が減るので、節税対策としても有効です。
まとめ
個人年金には様々なメリットとデメリットがありますが、しっかり理解してから加入するようにしましょう。
何度もお伝えするように、周りが入っているから、営業マンや親に勧められたからといって、よく理解せずに加入するのが1番良くありません。
そして、これからは個人年金だけでは老後の資産を構築するのは難しいですので、しっかりお金に対する理解を深めて様々な制度や仕組みを活用する必要があると言えます。
コメントを残す